日米野球はこのままで良い
侍ジャパン vs MLBオールスターチームによる2018日米野球は、最終戦を残して侍ジャパンの勝ち越しが決定した。そこで、個人的意見として、(まだ第6戦を残しているが)2018日米野球の良かった点、今後の開催意義について述べたい。
World Baseball Classic 2013 | AT&T Park, San Francisco | Flickr
――何故、侍ジャパンは2大会(2014日米野球と2018日米野球)連続で勝ち越せたのか。
まず、2大会連続で侍ジャパンの勝ち越しが決定したことについて、侍ジャパンの質が高くなったのか、MLB選抜チームの質が低くなったのかは気になる所だが、これは概ねMLBファンの方々と同意見だと考えている。つまり、両方である。
そもそも、侍ジャパンの質が高いことは、過去4大会実施されたWBCの戦績からして明らかだ。ところで、五輪において野球は行われなくなった(東京五輪では実施予定)ものの、WBC(各世代毎の大会含む)やプレミア12等、国際大会の機会は、00年台後半から劇的に増加している。日米野球が一時期中止されていたのは、(一因に過ぎないものの)WBCが始まるためであったが、その国際大会で勝つために日米野球は再開された。日米野球の開催意義は一先ずここにある。
――日米野球の今後の開催意義。双方の利点。
先程述べた通り、開催意義は、日本が国際大会で(アメリカやドミニカ、プエルトリコと言った強豪チームに)勝つために必要な経験を積むためである。そして、その開催意義に沿ったクオリティーの選手を、今後を含めて招待することが出来ていると私は考えている。したがって、日米野球には意義があり、今後も開催されるべきである。
当然、MLB選抜チームに利点がないわけではない。招待されている選手の立場はバラバラである。引退を控えている選手、来季の所属先が決まっていない選手、オフシーズン、WL等でプレーを模索している選手、故障されては困るスター選手等である。
来季の所属先が決まっていない選手にとって、WBCで優勝経験のある国の代表チーム相手となれば、これ以上ないアピールの場である。所属先は決まっているが、25人登録枠やクローザーの当落選上レベルの選手にとってもである。また、WL等でプレーを模索するようなレベルの選手にとっても、日米野球は最適な場である。
何より、日本観光をすることが出来るというのも大きな利点だろう。シーズン中と違い、様々な場所で様々な観光や体験をすることが出来、普段リーグが異なる、自分はオールスターに選出されるレベルではない等の理由により、接点を持つことが出来なかった選手と交友関係を築くと言ったことも利点だ。
しかし、これではMLB選抜チームの選手にとっての利点であり、MLBの利点が乏しいと思われるが、そのようなことはない。MLBは、野球の国際的発展を願っている(それは最終的にMLBの利益になるからであることは言うまでもない)のであって、日本の質が向上し、そしてトップクラスの選手がMLBに移籍することを考えれば、MLBの利点は大きいだろう。より踏み込んで収入の話をすることは記事の主旨から逸れるためここまで。
――侍ジャパンの質は明らかに向上している。
さて、日本が五輪において金メダルを獲得したのは、プロ野球選手が解禁される前の1984年のロサンゼルス五輪のみである。したがって、2006年WBC、2009年WBCにおける連覇は、国際大会において、プロ野球選手を擁する侍ジャパンの初優勝と言える。
そしてそれは、サッカー同様に、国際大会でどのような戦績を収めるかを重要な関心事(つまり、国際大会で侍ジャパンが勝つと嬉しいから、勝たないと行けないにステップアップした)にさせた。であるからして、2012年に代表は常設化され、そして、日米野球が再開された。国際大会に対するモチベーションの大きな向上は、そのまま侍ジャパンの質の向上にも繋がっていると考えている。無論、国際大会の経験が増加していることも向上に繋がっているだろう。
――少なからず、日米野球におけるMLBオールスターチームの質は低下している。
では、MLB選抜チームの質が低くなったのは何故だろうか。年俸高騰によりフロントラインスターターやクローザーを招待出来なくなったこと、逆にWBC開催により、日米野球で実力を誇示する必要がなくなったこと(2013年WBC以降、MLBで活躍しているドミニカや開催国であるアメリカが優勝を果たしている)等が挙げられるかもしれない。かもしれないとしたのは、先述した通り、少なからず質は低下しているものの、開催意義を考えれば許容範囲の低下であり、理由を追求する程のものではないと考えた。
――2018日米野球の良かった点。
単純に、アトランタ・ブレーブスのロナルド・アクーニャ Jr.とワシントン・ナショナルズのフアン・ソトという、21世紀以降1番か2番かという白熱した新人王争い(もっとも、2人は新人王より遠い先を見据えているに違いないが)をした選手が来日して野球をしたという事実である。
デビッド・オルティスのような、名前を聞いたことがあるスーパースターの特大ホームランが与えるインパクトも大きいが、MLBを知らない人にとっては初耳のフアン・ソトが、外角の球を悠々スタンドインさせたことが与えるインパクトも大きいだろう。もっとも、ニューヨーク・メッツのアメッド・ロサリオ等が与えた、メジャーリーガーは大雑把というイメージもそれなりに大きいはずだが、それはそれ、である。既に国内での知名度は高いはずだが、セントルイス・カージナルスのヤディアー・モリーナ等は守備で日本のファンを沸かせた。メジャーリーガーは色々いるということで何卒。
地味に嬉しかったのは、広島で行われた第4戦。9回表菊池選手が決めたセーフティースクイズだ。MLB選抜チームの得点のとり方は正直シンプルだった。シーズン中の埼玉西武ライオンズ同様に、長打力で走者を返すというものである。(アクーニャが盗塁を決めたものの、得点は長打依存であった)が、野球は腕だけで行うスポーツではなく、足を使うスポーツでもあるというのを示したワンシーンだった。
また、名古屋で行われた第5戦の1番山川選手もテンションがあがった。と思ったが、1番山川穂高は代打起用で途中出場したものであった……。1番強打者好きなんだけどなぁ。(完)