カーター・スチュワートは前例なのか異例なのか
福岡ソフトバンクホークスが、前年ドラフト1巡目右腕のカーター・スチュワート(19)と6年$7M前後で契約。
Scott Boras (Trending Twitter Topics from 28.02.2019) | Flickr
2018年のMLBドラフトで、全体8位指名権を有していたアトランタ・ブレーブスは、高校生No.1投手と評されたカーター・スチュワート(RHP)を指名した。しかし、右手首の怪我が原因でブレーブスは契約金$2Mを彼に提示。彼の希望金額は$4.5Mであったため、彼はプロ入りではなく、2019年のMLBドラフトで指名されることが可能である短大進学という選択肢を選んだ。
そして2019年5月下旬、日本プロ野球の福岡ソフトバンクホークスがスチュワートと6年間$7Mで契約を果たしたと見られている。
Right-hander Carter Stewart, the No. 8 pick in last year's draft who did not sign with the Atlanta Braves, is in agreement with the Fukuoka SoftBank Hawks on a six-year deal worth more than $7 million, sources tell ESPN. Stewart, 19, will start in the minor leagues in Japan.
— Jeff Passan (@JeffPassan) May 22, 2019
プロフィール
カーター・スチュワート Carter Stewart - The Baseball Cube
身長 6-6 体重200 右投げ右打ち 投手
1999年生まれの19歳
オーガリー高校→イースタンフロリダ州立短大(フレッシュマン)→福岡ソフトバンクホークス
動画
2017年8月13日のパーフェクトゲーム オールアメリカンクラシックでのピッチング
2019年1月29日のピッチング
某書籍風プロフィール
代理人スコット・ボラス
スチュワートの代理人はスコット・ボラスである。ボラスは、過去のMLBドラフトにおいて、代理人を務めている選手のNPB入団を2回チラつかせ、いずれも相場を上回る契約金で契約を果たしている。無論、交渉材料にするのではなく実際に入団を果たしたのは初。
※Twitterではその1例としてブライス・ハーパーを挙げましたが、正しくはスティーブン・ストラスバーグでした。尚、ハーパーは飛び級で短大に入学し、ドラフト指名年を調整してプロ入りをしました。
$7Mについて
スチュワートは短大フレッシュマンの今季を優れたスタッツで終えたものの、肝心のバリューを高めることに失敗。2019年MLBドラフトで1巡目指名されることはないという見立てが多い中でのホークス電撃入団となったが、まず$7Mという金額について考えたい。
表2016-2018年のMLBドラフトで契約金$4M以上で1巡目指名された選手一覧
PICK | TEAM | PLAYER | AGE | POS | COL | SIGNED BONUS | YEAR |
1 | DET | Casey Mize | 21 | P | Auburn | $7,500,000 | 2018 |
2 | CIN | Hunter Greene | 17 | P | California-Los Angeles | $7,230,000 | 2017 |
2 | SF | Joey Bart | 21 | C | Georgia Institute of Technology | $7,025,000 | 2018 |
4 | TB | Brendan McKay | 21 | 1B | Louisville | $7,007,500 | 2017 |
5 | ATL | Kyle Wright | 21 | P | Vanderbilt | $7,000,000 | 2017 |
1 | MIN | Royce Lewis | 18 | SS | California-Irvine | $6,725,000 | 2017 |
3 | SD | MacKenzie Gore | 18 | P | East Carolina | $6,700,000 | 2017 |
4 | CHW | Nick Madrigal | 21 | SS | Oregon State | $6,411,400 | 2018 |
2 | CIN | Nick Senzel | 20 | 3B | Tennessee | $6,200,000 | 2016 |
1 | PHI | Mickey Moniak | 18 | OF | $6,100,000 | 2016 | |
3 | PHI | Alec Bohm | 21 | 3B | Wichita State | $5,850,000 | 2018 |
6 | OAK | Austin Beck | 18 | OF | North Carolina | $5,303,000 | 2017 |
5 | CIN | Jonathan India | 21 | 3B | Florida | $5,300,000 | 2018 |
7 | SD | Ryan Weathers | 18 | P | $5,226,500 | 2018 | |
8 | PHI | Adam Haseley | 21 | OF | Virginia | $5,100,000 | 2017 |
7 | ARI | Pavin Smith | 21 | 1B | Virginia | $5,016,300 | 2017 |
4 | COL | Riley Pint | 18 | P | $4,800,000 | 2016 | |
9 | OAK | Kyler Murray | 20 | OF | Oklahoma | $4,660,000 | 2018 |
6 | NYM | Jarred Kelenic | 18 | OF | $4,500,000 | 2018 | |
10 | PIT | Travis Swaggerty | 20 | OF | South Alabama | $4,400,000 | 2018 |
10 | LAA | Jordon Adell | 18 | OF | Louisville | $4,376,800 | 2017 |
11 | BAL | Grayson Rodriguez | 18 | P | $4,300,000 | 2018 | |
7 | MIA | Braxton Garrett | 18 | P | $4,145,900 | 2016 | |
5 | MIL | Corey Ray | 21 | OF | Louisville | $4,125,000 | 2016 |
17 | LAA | Jordyn Adams | 18 | OF | $4,100,000 | 2018 | |
12 | PIT | Shane Baz | 17 | P | Texas Christian | $4,100,000 | 2017 |
6 | OAK | A.J. Puk | 21 | P | Florida | $4,069,200 | 2016 |
13 | MIA | Connor Scott | 18 | OF | $4,038,200 | 2018 | |
9 | MIL | Keston Hiura | 20 | 2B | California-Irvine | $4,000,000 | 2017 |
3 | ATL | Ian Anderson | 18 | P | $4,000,000 | 2016 |
この表は、spotrac.comを参考に、2016年-2018年のMLBドラフトで$4M以上の契約金を手にした選手の一覧である。(ドラフト1巡目のみを対象としたため、漏れがあるかもしれない)
表を踏まえて
直近の高卒選手で最も高い契約金を手にしたのは、$6.1Mのミッキー・モニアック。高卒投手に絞ると$5.2Mのライアン・ウェザーズ。年齢が近い選手では$6.7Mのマッケンジー・ゴア。いずれにせよ、$7M前後の金銭が保証されることがいかにレアであるか分かる。無論、ドラフト指名が確実視されていた選手を外国のリーグが獲得したことによる割高料金であることを考慮しても、$7Mは高いと感じられる。
ただ、$7Mでドラフト上位指名が確実視されている選手が獲得できるのであれば、ホークスの動きを真似したい球団が現れてもおかしくない。一括払いではなく複数年契約であることを鑑みれば、6年間$7Mを未知数な若手に支出出来る球団は、ホークスの他にもあるだろう。
今後の投資について
私見としては、海外の若手に投資する前に、三軍創設、カープアカデミーのような海外投資等他の部分に投資する球団の方が多いと考えているが、今まで0だったことが0ではなくなった今、この考察がどれ程の価値を有するだろうか。MLBは今回の入団を経て、何らかの規制案を発表するかもしれないし、そもそもスチュワートの育成は難しく、ホークスと同じ投資をしようと考える球団は現れないかもしれない。
どうなるか分からないことをいつまでも考えることに価値があるかどうかは分からないが、私はもうしばらく考えていることにする。