Take Me 同好会(非公認)のブログ

MLB(メジャーリーグベースボール)を中心に月1ペースで記事を書いたり書かなかったりしています。

強打者は四球を増やすのか

 数日前のことである。Twitter上にて、パワーヒッターは四球が増える。では、何故増えるのかという考察があった。(もっとも、読売ジャイアンツから広島東洋カープ長野久義選手が移籍したことにより、興味関心はその話題に移ってしまったのだが)

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 この問題。セイバーメトリクスを好む筆者にとっては重要な問題である。

 ①強打者は勝負を避けられるのだから、四球が増加するのは当然。

 ②したがって、強打者は選球眼が優れているとは限らない。

 ①と②は共に真実味が強い仮定である。そして、セイバーメトリクスは、定説が本当に正しいのかを確かめるためにあると言える。つまり、真実はどのようになっているのかは私にとって重要なのである。

 余談だが、最近再燃している得点圏に強い打者論は、セイバーメトリクスによって、得点圏打席という少ない母数での結果は参考にならない。とされた定説をセイバーメトリクスによって覆そうとする試みであり、信憑性はさておき、こちらも面白そうだ。

 では、強打者を定義することにする。考察するに至った経緯や元の考察及び議論を把握しておらず、また、そこで指し示す打者が強打者であったのか、では、その強打者とはどのような打者を指していたのかを把握していないため、これは私の主観である。

 今回は、

 のいずれかに該当する打者を、便宜上強打者とする。不足だと感じるものについては、皆様の目で確かめていただきたい。(つまり手抜き)また、私もこれだけでは不足だと思ったため、後でWPAやISOを足している。

 

①リーグ成績

 まず、①について。本塁打が増加傾向にあるMLBでは、BB%が上昇する傾向にあるのか、年度別リーグ成績から調べた。

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 2007年から2018年のリーグ総本塁打数を折れ線グラフにした。2014年は4400本を下回ったが、翌年から増加に転じ、2017年は6000本を上回った。2018年は一転減少したが、依然高水準だ。

 尚、長打率本塁打数に比例して上昇していない。

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 同様の期間のリーグ総ボール数を折れ線グラフにした。尚、BB%は大きな変動をしていなかった。ボール数は本塁打数に応じて上下したようだ。

 BB%について補足すると、本塁打数の減少に合わせて下降していたが、増加に応じて上昇。しかし、00年台後半の水準に戻っただけであり、本塁打数に比例して上昇してはいない。

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 今度はストライク数。ボール数に比べ、一貫して増加している。尚、K%は2007年から2018年の間、約5%上昇している。

 本塁打を狙う打撃は、ストライク及び三振を増やすが、ボールや四球は増やさないと言える。また、LD%、GB%、FB%に関しては、2007年から2018年の間、FB%は微減、LD%は微増となった。

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 さて、O-Swing%。上昇している。と言っても数%だが。何はともあれ、BB%が上昇しないのは、ボール球を振る打者が増加しているからだろう。言い換えれば、本塁打を防ぐために、投手はボールゾーンに逃げる変化球で勝負していると言うことが出来る。

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 Z-Swing%。こちらも上昇している。O-Swing%に比べると大きい。尚、O-Contact%及びZ-Contact%については、両方減少していた。幅はSwing%より大きい。つまり、以前ならば手を出さなかったボールに手を出す傾向が、リーグ全体で見られるというわけである。無論、手を出させるボールを投げる投手が増えたという見方も出来る。

 

①個人成績

 個人成績に入る。2016年~2018年に800打席以上マークした選手、288人を対象として、先に定義した強打者の成績が優れた選手程BB%が上昇するのか、相関係数を求めた。

2base hit BB% R^2=.001

Home run BB% R^2=.0764

LD% BB% R^2=.0054

Hard% BB% R^2=.1739

WPA BB% R^2=.235

ISO BB% R^2=.1475

 この中で比較的強いのは、Hard%とWPA、ISOである。だが、これでは直接的原因であると言えない。アプローチは、選手個々人のツールであり、強打者であるか否かとBB%は関係ないと言える。無論、まだ取り上げていない数多ある指標や成績の中に、鍵は埋もれているかもしれないが。

 

 今度は、同じ個人成績であるが、2015年~2018年に規定打席に到達した、のべ571人を対象として、単年の成績を参考にした。800打席程度プレーすると、選手本来のアプローチに戻る可能性があるが、単年であれば異なった結果が出るだろうということである。

2base hit BB% R^2=.0028

Home run BB% R^2=.1481

LD% BB% R^2=.0035

Hard% BB% R^2=.2029

WPA BB% R^2=.2243

ISO BB% R^2=.2083

 概ね同じ結果である。Hard%とWPA、ISOが比較的強かった。しかしながら、やはり直接的原因であるとは言えない。

 では、強打者になっても勝負を避けられないのか?は否である。四球は、球速、コース、回転数等に一切関係なく、審判が四球を宣言すれば四球である。際どいコースを攻められて三振。ボール球を見極めたのにストライク判定をされ三振。力配分された上で三振。この3つの三振の間に投じられたボール球の数、そしてその目的は異なるだろう。長くなったが、四球のみで判断することは出来ない。

 さて、ここまで、直接的原因であるとは言えないと書いてきたが、色々難しい点がある。結局、強打者とは何かが曖昧であるし、今後もリーグ総本塁打数が増加するのであれば、違った結果が見えてくるかもしれない。こういう感じでどうでしょう。

 

 ②強打者になってBB%が上昇した人、しなかった人

 (私にとって)息抜きである。成長する中で長打力を開花させた打者達は、勝負を避けられるようになったのかを紹介する。本当にサッとした感じ。

  • ディディ・グレゴリウス(SS)

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 BB%は2年目以降下降していたが、2018年大幅に上昇。O-Swing%は、NYY移籍後上昇していたが2018年下降。

  • トラビス・ショウ(3B)

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 2年連続30本塁打をマークし、直近2年のwOBAは.361と.351。元々慎重なアプローチだが、年々慎重になっている。その一方でContact%は上昇している。

  • スクーター・ジェネット(2B)

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 Hard%が直近2年上昇しているが、BB%には然程影響なし。闇雲に振り回しているわけでもなく、O-Swing%等に目立った悪化なし。

  • ホセ・アルトゥーベ(2B)

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 20本塁打以上をマークした2016年から、BB%が明らかに上昇したと言える。O-Swing%は、長打力を身につけてから下降。

 

 ここまで、強打者程四球が多いという調べ方をしたため、では、強打者になることで以前より四球は増えたのかを調べていく予定。