勝率順にならない順位表について
プロ野球の順位表を見ていて、?マークが浮かんだことはないだろうか。ここで1つ、具体例を挙げる。現地時間5月21日時点でのアメリカン・リーグ中地区の順位表である。
Corey Kluber | Erik Drost | Flickr
チーム / 順位 / 勝利 / 敗戦 / 勝率 / ゲーム差
クリーブランド・インディアンス 1st 22 23 .489 -
ミネソタ・ツインズ 2nd 19 23 .452 1.5
デトロイト・タイガース 3rd 20 26 .435 2.5
シカゴ・ホワイトソックス 4th 13 30 .302 8.0
カンザスシティ・ロイヤルズ 5th 14 32 .304 8.5
1.ゲーム差の計算方法
ホワイトソックスの勝率は.302、ロイヤルズの勝率は.304。にも関わらず、ホワイトソックスが4位なのである。この疑問を解決するためには、ゲーム差の計算方法とその数値が示すものを思い出す(あるいは知る)必要があるだろう。
結論から言えば、その時点で各球団が行った試合数が異なるためにこうなる。
ゲーム差={(1位チームの勝数-下位チームの勝数)+(下位チームの敗数-1位チームの敗数)}/2
例えば、インディアンスとタイガースのゲーム差を計算する。
- ゲーム差={(22-20)+(26-23)}/2
- ゲーム差=5/2
- ゲーム差=2.5
では、ホワイトソックスとロイヤルズのゲーム差も同様に計算する。
ホワイトソックスの場合
- ゲーム差={(22-13)+(30-23)}/2
- ゲーム差=(9+7)/2
- ゲーム差=8.0
ロイヤルズの場合
- ゲーム差={(22-14)+(32-23)}/2
- ゲーム差=(8+9)/2
- ゲーム差=8.5
細かく見ると、ホワイトソックスとインディアンスの勝数差は9である。一方、ロイヤルズは8でありホワイトソックスよりも差が少ない。が、ロイヤルズは敗数がホワイトソックスより2多い。
2.ゲーム差を縮めることのおさらい
では、ホワイトソックスとインディアンスが連戦した場合、一体何連勝すれば順位が並ぶのかを考える。この時、他球団は試合を行わないものとする。
直接対決で首位のチームに勝利するとゲーム差が1縮まるのだから、ゲーム差8.0の場合は8連勝すれば良い。では、この時の勝率はどうなっているだろうか?
インディアンスは22勝31敗で勝率.415、ホワイトソックスは21勝30敗で勝率.411。
また疑問が生じた。既に最初から気付いている人もいるだろうが、インディアンスとホワイトソックスの試合数は異なっている。順位が並んだと仮定している時、インディアンスは53試合でホワイトソックスは51試合である。試合数が異なるのだから、ゲーム差0.0で勝率が並ばないのは直感的に理解できる。
同様にして、試合数が異なるホワイトソックス(21日時点で43試合)とロイヤルズ(21日時点で46試合)の順位が勝率順にならないことも理解できる。が、それでも釈然としないかもしれない。だから極端な例をあげてみる。
3.順位が勝率順にならない例
チーム / 勝数 / 敗数 / 勝率
A 10 10 .500
B 20 30 .400
C 05 10 .333
AとBのゲーム差は5.0である。AとCのゲーム差は2.5である。したがって順位表は正しくはこうなる。
チーム / 勝数 / 敗数 / 勝率 / ゲーム差
A 10 10 .500 -
C 05 10 .333 2.5
B 20 30 .400 5.0
AとCは理解しやすい。もしAが1試合もしない間に、Cが他球団に5連勝すれば順位が並ぶだけでなく、勝数が同じとなる。分かりやすい。
問題はAとBである。同様に、Aが1試合もしない間に、Bに破竹の10連勝をしてもらうことにしよう。すると30勝30敗で順位が並ぶ。勝数は実に20の差がある。フェアじゃない?そんなことはない。Bは60試合を終えたが、Aは20試合しか終えていないからだ。さて、60試合がこのリーグのシーズン試合数としよう。(例の中でまた例をあげてしまった)Bは勝率を落とすことはないが、Aは残り40試合で20勝しなければBに負ける。フェアだ。
4.結論
つまり、この例で言いたいことは、試合数に差があると順位は勝率順にならない。が、特殊な例を除いて全球団の試合数は同じであるから、シーズン全日程を消化すれば順位は勝率順となる。これは引き分けのないメジャーリーグの話であり、NPBの場合はその限りではない。