シンカーを改善してLaunch Angle(打球角度)を下げることに成功したアーロン・バマーについて
Baseball Savantは、Statcast等を用いて収集を行った詳細なデータを公開しているウェブサイトである。特徴は、グラフィカルで訴求力の高い情報を発信していることが挙げられる。今回は、打球速度と打球角度に注目して、打球角度を下げることに成功しているアーロン・バマー所属のホワイトソックスについて調べた。
Photo by Getty Images
- Avg Exit Velocity by Team 2018
- Avg Exit Velocity by Team 2019
- Avg Launch Angle by Team 2018
- Avg Launch Angle by Team 2019
- Pitching Graphs
- Hitting Graphs
- Launch Angleを下げたTeam
- Chicago White Sox Pitcher
Avg Exit Velocity by Team 2018
2018年に被打球速度を最も抑えることに成功したのは、ニューヨーク・メッツの86.5マイル。一方、最も抑えることに失敗したのは、テキサス・レンジャーズの88.6マイルだ。尚、打球速度が最も遅かったのは、86.1マイルのシンシナティ・レッズ。最も速かったのは、89.6マイルのボストン・レッドソックスだった。
このことから言えることは、(被)打球速度における球団差は小さいということである。すなわち、チームの得失点に変化を加える上で、ユニークな要素ではないということが分かる。
Avg Exit Velocity by Team 2019
2019年に被打球速度を最も抑えることに成功したのは、ロサンゼルス・ドジャースの86.6マイル。レッズは5位に下降している。一方、最も抑えることに失敗したのは、カンザスシティ・ロイヤルズの89.4マイルだ。レンジャーズは21位に上昇している。尚、打球速度が最も遅かったのは、86.8マイルのレッズ。フレディ・ガルビス(SS)の獲得からも窺えるように、打球速度を念頭に置いた補強はしていない。最も速かったのは、89.7マイルのニューヨーク・ヤンキースだった。
Avg Launch Angle by Team 2018
(被)打球速度に比べて、球団による差が大きいのがランチアングルである。2018年の1位はアリゾナ・ダイヤモンドバックスの9.1°。最下位はデトロイト・タイガースの14.3°だ。尚、打球角度の1位はオークランド・アスレチックスの14.7°。最下位はサンディエゴ・パドレスの8.9°だった。
(被)打球速度を速める、もしくは抑えることは30球団の共通認識としてあるが、(被)打球角度を高める、もしくは下げることについては、球団による方針、あるいは技術の差が生じているようである。
Avg Launch Angle by Team 2019
2019年の1位はコロラド・ロッキーズの9.2°。最下位はマイアミ・マーリンズの15.2°だった。尚、打球角度の1位はミネソタ・ツインズの14.7°。最下位はマーリンズの8.5°だった。ここまで文章を中心にした情報となっているため、次に図表で各球団の大まかな雰囲気を示す。
Pitching Graphs
2018
2019
Hitting Graphs
2018
2019
Launch Angleを下げたTeam
最も下げたのはシカゴ・ホワイトソックスの1.9°。タイガースも1.8°下げることに成功。最も上げてしまったのは-2.3°のダイヤモンドバックスだった。最も下げることに成功したホワイトソックスの投手陣の成績に注目した。
Chicago White Sox Pitcher
Aaron Bummer
LAを0.7°から-3.4°、SwSP%も30.6から18.3に下げることに成功。その結果、FB/LDの被打球速度を2mph落として92.2mphとしている。Barrel%は7.1から2.3。
2018年はシンカーを主体としながらもスライダーを積極的に投じていた。2019年になると投球の大半をシンカーが占めるようになり、MLB屈指のグラウンドボールピッチャーとして支配的な投球を披露した。
Devan Fink (@DevanFink) | Twitter氏の記事では、ホワイトソックスのブルペンにおいて、アーロン・バマー(LHP)が重要な役割を担っていること。それから、LAを下げる要因となったシンカーの改善について述べられている。記事の重要な部分であるため直接的な記述はしないが、シンカーの球速が2マイル程上昇したことのみが好成績の要因ではなく、また2020年度に好成績を再現出来るのか否かについても述べられている。
Jace Fry
被打球速度及びHard Hit%は悪化しているにも関わらず、Barrel%は5.7から5.8と誤差の範囲。LAを8.7°から4.3°。SwSP%を33.3から29.2とそれぞれ改善している。シンカーを武器にしてリーグ屈指のリリーバーに成長したバマーとは趣の異なる数字だ。
カーブを初球に用いるのが特徴的で、2019年は割合が減少したものの、初球はカーブかカッターである。投球の主体を担うのはカッター。95マイルのシンカーを武器にするバマーとは異なり、彼の速球は93マイルであり、メインのカッターは88マイルと速球の部類ではない。但し、バマーの速球のスピンレートは平均を大きく下回るのに対して、彼の速球のスピンレートは平均を大きく上回っている。LA等を改善させたにも関わらずHard Hit%等が上昇した背景はこの部分にありそうだ。
もう少し彼の投球を掘り下げると、球種の使い分けが向上している。2018年はカーブを広範囲に投じていた上、4FBとカッターに差異はなかったが、2019年はカーブを投じる範囲を狭めると共に、低めの左右に投げ分けるカッターと2FBとの差別化として、4FBを高めに投じるようになっている。したがって、それぞれの球種の有用性を高めることで、LAを下げることに成功したのかもしれない。2020年は、カーブの用い方に変化が生じるのだろうか。
Dallas Keuchel
シンカー主体の投球でLAが低いが、近年はBarrel%を抑えられていない。球速のみならずスピンレートも平均を大きく下回るのはフライとの相違点だ。新天地でダラス・カイケル(LHP)が復活するか否かは彼個人の課題ではなく、チームに明るい兆しを見せる為に必要なタスクになるのではないだろうか。
Steve Cishek
シンカー主体である点はカイケルとの共通項だが、LAを抑えられていないのがスティーブ・シシェック(RHP)だ。被打球速度は悪くないため、成績の改善が見込める。カイケルのシンカーとの差異は、H-Movement。落差は同程度だが彼のシンカーは横にスライドする。カイケルとシシェックをどのように起用していくのか、また投球が変化していくのだろうか。気力があれば続編を書きたい。大抵ないのだが。
Coach
James Fegan (@JRFegan) | Twitter氏の記事によると、ホワイトソックスはトラックマンやラプソードといった技術の活用に積極的であるとのこと。より詳しい情報は、試用期間があるので登録してお読みいただきたい。
今後コアとなるだろうキーマンとの契約延長を行っているホワイトソックス。同球団のこのような動きは今回が初めてではないが、ミネソタ・ツインズが長い冬眠から目を覚ましたアメリカンリーグ中地区において、ホワイトソックスはどのような王朝を築いて行くのか。マイケル・コペック(RHP)をすこれ!!